7/8(火)「きっと、それも正しい」【夫】

もともと僕たち夫婦はいわゆる「授かり婚」だ。
しかし、交際時も結婚を前提、妊娠が発覚する直前にも結婚式場に見積もりをもらっていたので、「不意な授かり婚」では決してなかった。


2008年1月に交際をスタート。
2008年11月に結婚。
2009年5月に長男の誕生。
今回のことは初産から5年と2か月後のことだった。


この期間、二人目をずっと授かることができなかった、という訳ではなかった。
長男への愛しさや、固まりつつあるライフスタイルに満足して、「振り出し感」に踏み切れず、先延ばしにし続けていた。
そして、今年になってやっと夫婦で「兄弟を作ろう」と決意し、授かることができた子どもだった。



今日は産婦人科で「ご家族に病状の説明」を受ける日。
指定された正午に病院へ。
もちろん、はなちゃんは暗い。
しかし、自分は昨日帰宅するまでに「受け入れる整理」ができていたので、人から見れば「つまらないほど普通」だ。


さて、産婦人科では、待てど暮せど呼ばれない。
さすがにいらいらしてくる。
「サービス業なら潰れているな」と思いながら、結局2時間。ようやく説明が始まる。


まずは「人柄は良いが不器用そう」な院長が、気を使いながら、まわりくどく説明してくれる。
次第に説明に収集がつかなくなり、「んーーー。まー要は脳がないのよ。」と収束。
着陸前の飛行機が上空で旋回を続け、あげく最後は直滑降で着陸。
そんな感じだった。


次に助産師の加藤さんが登場。
院長を押しのけ「ゴッドハンド」と呼ばれるカリスマ助産師。
頼りがいが溢れ出ているほど、言葉が強い。
本当に、たくさんの嬉し涙や悔し涙、罪悪感の涙に触れた人だからこその厚みだと感じた。
きっと、この言葉の強さも加藤さんの「施術」なんだと思う。


「いつから入院しましょうか」と問われたので、「できる限り早く」と答えた。
はなちゃんは、結構つわりが酷かったので「1日でも早く、報われないつわり」から解放させてあげたかったし、早く決別しないと心が持たないだろうと思った。


夜、はなちゃんと色んな話をした。
色んな話をしたというより、彼女の不安のかたまりを受け続けた、という方が正しい。
「なぜこんなことになったのか」「やりきれない」「不安」「こわい」などなど。などなど。
今この時間は、仕事の愚痴や、恋人への不満など「聞いてあげればすっきりする」類のものではないと感じていた。
彼女はあまりに納得のいかないことへの「答え」を探していた。


もともと相談事や、人の話を聞くことは得意だったが、今回は夫婦二人に同時に訪れた初めての経験。
もちろんスタンバイができているわけがない。
でもしっかり受け止めなければいけない。
まるで「悟りのクイズ番組」のような、先延ばしにできないQ&Aの応酬に、とにかく考え続けたし、答え続けた。


正直、中には「違う」と思ったこともあった。
「こわくて赤ちゃんに会えないかも知れない。」と。
普段なら切々と説教をしているのだろうが、今すべきことはあくまで「彼女を受け止める」こと。
否定することなく、「きっと、それも正しい」と腹におさめた。